帰り道のこと

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帰り道のこと

 帰るサラリーマン、OL、これから塾へ向かおうとしている高校生、ティッシュか何かを配るアルバイトをしている人、街は沢山の人で賑わっている。  大学生一年の夏希は、行く宛もなく街を音楽を聞きながら彷徨う。別に帰る家が無い訳ではない。しかし、どういう訳か帰るのが勿体無い気がする。そしていつも通り、お店に入っては出ての繰り返しをするのだ。  ふと思い出した。母親にシャンプーを買ってくるように言われていることを。慌てて、駅近くのドラックストアへ行く。すれ違う人々はどこか忙しそう。私は暇そう。そう思いながら。 ドラッグストアへ入ると、高校生の女の子達がガヤガヤしているのが聞こえる。イヤホンしても聞こえる音量なのでどれだけうるさいかがよくわかる。彼女達は、色とりどりの商品が置いてある化粧品売り場にいた。 「えー、このシャドウ絶対可愛いよ~。○○に似合うって~。」 「このグロスなんて彼氏の前でしたら絶対カワイイ言ってもらえるよ~」 聞いているだけで耳障りだ。夏希にとっては敵だと思った。縁のない言葉が羅列される。可愛いだの、シャドウだの、グロスだの、彼氏だの? 単なる妬みにしか聞こえないかもしれないが、そう思ってしまうのであった。  夏希は、どこにでもいるような平均女子。化粧っ気なし。彼氏なし。女友達がいればいいと思っているのであった。唯一の趣味は人の撮った写真を見ること。人物なら尚グッド。自分でも撮るがあまり上手く撮れないので、人の写真を見るのが好き。  化粧品売り場を通り抜けてシャンプーが売っている売り場へ行く。目的の物を買えば、今日はそこでおしまい。あとは帰ろうと心に決めたのだった。  音楽の音量を更に上げて、家路につく。
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