血色と傘と口紅

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「わぁー! やったね! なっちゃんが私のあげた口紅つけてくれてる。」 アリサの声が高く響く。 「リエからもらったブックカバーもこの通り着けてきましたよー」 かばんの中から文庫本を取り出し、パラパラめくってこの通りとばかりに四人に夏希は見せる。今か今かと待つノンノンには、 「ノンノン、ごめん。もらったアクセは、今日お留守番です。いい子にしてますよ~」 というのだった。本当は着けてきたかったが、朝はハプニングが起こったのだ。血色が悪いというハプニング。 「…今度着けてきてね」 ノンノンの声が少しテンション低め。 「許してあげなさいよ。今日はいつもの電車乗れなかったんだっけ? そのこと考える寝坊したのかな? あれ? でも口紅は塗ってるね。おかしいな(笑)」 「唇の血色がピンチだったんです。でも、色付きリップがなくて、今日は口紅にしました。」 リエの何とも言えないフォローはさておき、夏希は事情を説明した。ノンノンはわかってくれたが、今度は必ず着けてこようと思うであった。  リエが今度はこのようなことを言う。 「なっちゃんさ、その口紅すごく良いね。アリサ選ぶのうまいね。なっちゃんを口紅デビューさせたよ。」 口紅デビュー。そのように言われると、何故がドキっとする。     
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