女の人とリップクリームと心理学

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 しかし、少しでもまた話せたことを嬉しく感じる夏希だった。しかも本名の姓の方を聞けたということは、少し進歩になった。 後で、今度は、自分は何て呼べば良いか言うことをザキさんに伝え忘れた夏希がいた。いつかの二の舞である。 数日後、本当に寝坊して身支度が終わらない日がやってきた。駅まで走る夏希。当たり前のことながら、口紅を塗っている暇はなかった。橘線のホームで口紅が見つからず、仕方がなくリップクリームを塗る。 中之辻線のホームでザキさんを探すが見つからない。ここ数日一本遅い電車に乗ればザキさんと遭遇するということがわかった。話はかけることはできないが。だが、今日は、ザキさんはいなかった。同じ電車に乗っているはずなのに。時計を確認。自分の確認に狂いはなかった。しかし会うことができない。 その日、食堂でも前のように会うことはなかった。早く、自分の呼び方のことを伝えたかったのだが。日にちが経てばきっと相手は忘れてしまう。そのような不安が夏希にはあった。だから、早く会いたかった。     
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