忠告

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忠告

思えば私がこの古い一戸建てに住みだしてから、もうかなりの年月が経っている。 基本、外に出ないから季節なんてものはわからないんだけど、たまに訪問してくる不動産屋のお兄さんやそのお客さんが厚手のコートを羽織っているところを見ると、おそらく今は冬なのだろう。 しかし、いつもは私の存在に気づいて気分が悪くなったり寒気がしたりと、身体の不調を訴えて早々と帰ってしまう客が多いのだけど、今回のお客さんは私の存在に気づいていないのか、なかなか帰ろうとしない。 それどころか、この客はどうにもここが気に入ってしまった様子で、物件書類を何度も見返しながら「もうここに決めようかな」なんて話している。 別にあんたがこの家を気に入って住むのは勝手だけれど、一応まだ私の家なんだから、私が首を吊った部屋であぐらをかいて座り込むのだけはやめて欲しいわ。 それからもし話せるならあんたの背中に引っ付いている女。頭が陥没して左目が飛び出しちゃってるそのブサイクな女。 そいつはこの家があまり気に入っていない様子だから、やめておいた方がいいんじゃない?と忠告してやりたい。 だってこの女はここへ来た時からずーっと敵意むき出しで私をにらんでるんだもん。今後どう転んでも仲良くはなれそうにないし、良い影響はない。 もちろん私がさっさとここを出ていけばいい話なんだろうけど、他に行くあてもないし長年住んでる家だから愛着もあるし。こんな事なら誰か私を成仏させてくれないかしら? ああ、今後あの男がここへ越して来るまでに解決しなきゃならない問題だと思うとすごーく気が重くなるわ。 了
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