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アイリはピクリとも動かない。
どうして……、どうして……?
タクの胸がザワザワして……誰かに強く叩かれているみたいに、ドンドンと鳴った。
「途中までは面白いと思ったんですけどね」
細い眼鏡を押し上げながら背の高い左側の男が言った。
「でも、貴方は余計な物を付け過ぎて……挙げ句逃げられた。こんな事までしなくとも、胎児は育つんですよ。適度な温度と、羊水と同じ成分の液体と、栄養素を投薬すれば。それに、胎教にいい音楽も、母親の声も聞かせられる。胎児用保育器を……わざわざ人型にしなくとも」
ツンツンと話す男の隣で、肩を落とした背の低い恰幅のいい男が言った。
「ああ、君の言う通りだ。アイリから感情機能は抜く。そしてこの研究も、全て白紙に戻すよ」
「その方がいい。余計な物は、やはり余計な物でしかないんです。……この通り、胎児まで駄目にしたんですからね」
そんな会話が交わされ、
動かなくなったアイリは大きな鉄の箱に容れられて、連れて行かれた。
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