ドールワールド

近年、医療技術、科学技術を筆頭に、全てが目まぐるしい発展を遂げた。

しかしそれに比例して、人々は古来の人間らしい感情を欠落させていた。

───誰かを、

　　　　　愛しいと思う事も。

仕方がないのだ。

性交せずとも子どもは出来、女性が腹を痛めずとも、人を増やせる世の中になったのだから。

そう。今それらは進歩した医療技術と科学技術の管理下でどうにでもなる。

そしてその感情は、無愛想に淡々と日々を生きる今の人間たちが然程必要とするものではなかった。

そんな中、人の無くした感情を持った彼女は、繰り返される実験に疲れ、研究室から逃げ出した。

そのお腹に、愛しい子どもを抱えて──……。