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「でもそう言っても、私もセックスがどんなものかは知らない。この子、体外受精された知らない誰かと誰かの子だから」
と、アイリはため息をつきながらソファーにぐったりと身を預ける。
遠くを見て、どこか哀しげな表情をして。
タクはそんな彼女をまた不思議そうに見ていた。
すると、アイリが困ったように
「ごめんね。こんな話、君にはまだ早いよね」
と眉をひそめた。
「でも……それでも愛しいの、とても。守りたいと思うの」
そう続けたアイリの顔が、今度は優しさに溢れる。
彼女の表情がころころと変わる事が、タクにはどこか不思議で……惹かれた。
「……ねぇ、アイリ」
「何?」
そして、胎児保育器じゃなくて、優しいアイリがお腹で大事に育てている子どもがどんな風に育つのか、
「……ここに居て?」
タクは、見てみたいと思った。
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