オルター・洋子「龍平洋漂流記」より 第3章 妙味な男たち

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 憲男の衣装もどうもおかしい。カラフルなチェックとか、ノルディック柄とか、ダサ可愛くて何となく彼女が選んで着せている感じが有る。さらに憲男はパチスロ店でボーイとして働いているが、チェックのベストの制服がやはりダサ可愛い。お昼休みには、カノジョが作ったラブなキャラ弁を、箸の先で子供のようにつつきまわして食べていた。女に愛され、愛されることに何の疑念も持たない男の役がなんと自然なことだろう。憲夫は「自分を捨てた母」が深く自分を愛していることも至極当然と思っていたので、失った時泣き崩れたのである。  堀北真希はいつも通り清潔で可愛らしかった。声優になりたいアニメおたく、という設定には違和感が有ったけど、演技も安心して見ていられた。でも安心して見ていられる役者っておもしろくない時がある。ごく若い時の「アルゼンチンばばあ」という映画の堀北がすごく良くて、私は彼女を、すてきな女優さんになるのではと思っていたが、大人になってからの堀北真希は演技に卒がなさ過ぎて、「実はちょっとアレなんじゃないか」と思う時が有った。なんか物足りない。そうこう思っているうちに堀北真希は、結婚して役者をやめてしまった。まあ、私にとっては、引退を惜しむ逸材、というほどでもなかった。「卒なく演じる」より、むしろ「卒なく家庭をこなす」方を応援したい人である。
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