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恋の門(2004公開)…あの頃の松田龍平
あんなにズンズン歩く松田龍平の映画を私は初めて見た。終始、声もはっきり通る。私の知っている松田龍平はもぞもぞ話し、ひょこひょこ歩いたり走ったりするのに、「恋の門」の松田龍平はちがう。コメディは、まじめに演じれば演じるほど見ている方は可笑しい、というのを聞いたことがあるが、青木門はちっともふざけていないから、すること為すこと可笑しい。
酒井若菜という女優さんの美しさと芸達者ぶりに驚いた。松田龍平の、気が付いたら大舞台の上にもう数年立っている、という「おぼこい」感じと、表舞台に出たい自らの意思でのし上がってきた酒井若菜の「叩き上げ」な感じの落差がすごい。そして何これ?という終わり方。こんな松田龍平を観れるのはこの映画しかない。
あの頃よくしていた顔周りの髪を下ろしたざくざくしたロングヘアーとまばらな髭は、ワイルドなようでいて、実は二十歳前後の松田龍平の独特の魅力を際立たせる。あの雰囲気、たまに「中性的」とか言われてるけど、そんなに単純ではない気がする。中性的な若い男性で想像するイメージは、もっと小柄で目のぱっちりした線の細い人。松田龍平は背も高く骨っぽく、モダンアート的な無機質な美貌。それがぱっとほころんだ時の破壊的な可愛さが斬新なのだ。あれはなんというか、まったく新しい男性の魅力の提示だった。蒼木門は、どんどんシャープになって「ゆるかっこいい男」になってゆく前の、ある時期の松田龍平そのものである。
ベリーショートもオーソドックスな長さも似合うが、一時期の松田龍平と言えばこのロングヘアーとまばらにしか生えないあごひげ。着る物や髪形がざっくりすればするほど、清潔感と甘さが際立ってくる不思議さ。それを私は「白拍子効果」(※1)の一種だと思っている。
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