オルター・洋子「龍平洋漂流記」より 第3章 妙味な男たち

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舟を編む(2013公開)…松田龍平にちょっと似た人 「舟を編む」面白かった。観終わってすぐは面白かったな、と思っても何度も観たくなる映画はなかなか巡り合えないが、これは松田龍平のファンじゃなくとも楽しめる、残る名作だと思う。  私は4回は観たが、毎回「あ、ここではこう言ってたんだ」と細かい発見がある。発見する度に細部に気を抜かないなあ、と感心した。辞書を作る人々という、地味で意表をつくテーマ、あまりにミクロな視点なので逆にファンタジーのようにも感じた。そう、顕微鏡で垣間見る微生物の形状や営みが詩的に美しかったりするのと似ている。 「マジメっておもしろい」というキャッチコピーの通り、前半は特に、松田演じる「馬締光也(まじめみつや)」のキャラクターの魅力に引き込まれてゆく。そしてこのストーリーがフィクションではなくて馬締光也という実在の人物のドキュメンタリーに見えてくる。それくらい馬締光也は生きていた。後半は彼が40歳くらいになって、だいぶ大人なので落ち着いて普通の人になってくるので面白味は減るが、ストーリー自体は綺麗に着地してゆく。 あと、彼の周りの人で素敵じゃない人がいない。 加藤剛、さま。(様を付けずにはいられない) 久しぶりに映画で拝見した加藤剛さま。一般的にはおじいさんと呼ばれる年齢になっても、あんなにイロイロ整った人っているんだろうか。加藤剛は死ぬまで「じじい」にならないんだろう。ちょっとかわいい顔の、当りのソフトな男の子を「王子キャラ」とか言うけど、一度、加藤剛の映画を観て深く考えてほしい。美貌はもちろん、清潔感、品、知性、姿勢や口跡のハンサムっぷり。王子とは、見た目がヒラヒラしていることとは違う。「王」の血を引く風格は有りながらも、「王」が持つべき残酷さや怜悧を持ち切れないのが「王子」なのだ。そういう意味で、加藤剛は死ぬまで王にはならず「王位継承者」。そして「砂の器」の時から気になっていたポチャポチャした手!あれは絶対、鼻クソなんかほじったことのない手だ。
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