オルター・洋子「龍平洋漂流記」より 第3章 妙味な男たち

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 次にオダギリジョー演じる西岡。 西岡はフットワーク軽く機転も利く男だが、馬締のどんくさい一途さに自分に無いものを感じて一目置いている。そして「辞書編集部」で力を発揮できるのは自分より馬締だ、と身を引くかっこいい役どころだ。なのにうっかり泣いてしまったりする。あの役をオダギリジョー以外誰がやれるのか。骨っぽいのか、ナヨついているのかはっきりしないところがぴったりなのだ。そして西脇千鶴とのカップルがまたいい。西岡が「お前の顔、微妙だな~」とかいいつつ、彼女の微妙な顔に執着しているのはミエミエだ。西脇千鶴の顔は可愛いが個性的だから設定に説得力が或る。相手の個性に執着するということは、どんなカップルにとっても重要なことだ。なんやかんやいって、男が女にチョットだけ余計に惚れている。(表面的に形としてそうなっているということであって、千鶴の愛情が薄いわけではない)私が知る限り、長続きするカップルはみんなそんなバランスだ。西岡も、馬締に負けずに可愛さいっぱいの男に仕上がっている。  ヒロインの宮崎あおい、知ってる限り今までで一番良かった。私は今まであまり彼女がいいと思ったことなかったけど、この香具矢というヒロインは素敵だった。宮崎あおいは居るだけで愛くるしい。が、その愛くるしさを封印し、きりっとした演技が魅力を際立たせた。ニコリともせず黙っている時の小鼻のわきの小さいしわが、なんだかすごくいい。馬締が素っ頓狂なことをしても、「おもしろいね」と動じないところがかっこいい。そしてそんな馬締に「男らしさ、頼もしさ」を見いだせる賢い女性である。可愛い外見なのに充実の中身。小さいのに良く研いだ包丁みたいな彼女に、馬締が惹かれていくのは説得力が或る。
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