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薄くて厚い硝子
記憶を遡ると大体、現れてくるのは3歳くらいの頃。
祖父の葬式の時だ。
私の記憶違いかもしれないが、死んだ人が本当に死んでいるか確かめるために、
大人達は何人かで死体を何回もゴロゴロと転がす。
それで起き上がれば生きている証拠、そうでなければ…という、形式上のものだ。
祖父は家族から疎ましがられていた。
性格が横暴で、酒ばかり飲んで、肝臓をやられ、
主治医にキツく止められても、死ぬまで酒をやめられなかった。
戦争にいってからだろうか。祖父は満州の会計士として海を渡った。兵士ではないので、銃を持って戦うことは無かった。
毎日形勢が傾いていく中で、何度も同じ地元出身者の若い青年達の死体を見た。
最後の方はあまりに多くて踏んずけて歩いた。
それくらい多かったらしい。
酒を飲んで暴れ、暴れすぎて網戸を破壊して自ら裏庭に転がり落ちたりしていた。
祖母はいつも表情が暗かった気がする。
祖父から開放された祖母は、仕事を辞めて私の子育てをかってでた。
両親は共働きで、平日はもちろんのこと、休日もバラバラで、両親と揃って休日を過ごすということはほとんど無い。
子供だからこそ寂しく、子供だからこそ、他人の家族と違うことに哀しみを覚えた。
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