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強い風が吹く日曜日。
自宅のリビングでソファーに座りながら、風に吹かれていた。
掃き出し窓を開け放つと、容赦なく風が入りこみ、部屋の中を駆け回る。
カーテンが風に翻弄されて、大きく揺れている。
その動きが、海の波に似ていると健太は思いながら眺めている。
何の用もない、退屈な午後のひと時だ。
リビングの隅に置かれた鏡が、時折カーテンの姿を映している。
健太は無感情のまま、カーテンを目で追いかけていた。
ピーンポーン。
不意にやって来た訪問者をインターホンが知らせた。
立ち上がり、インターホンに映し出された画面を確認した。
インターホンには誰も写っていなかった。
どうやら、荷物が届いたようだ。荷物の受け取りは、ポストが自動で受け取ってくれるから、インターホンだけが鳴って教えてくれる。
琴子だ、健太は思った。
健太は外に出て、さっそく荷物を郵便受けから取り出した。
荷物は思った通り、琴子の色眼鏡だった。
「琴子、戻ってきたんだね。待っていたよ。」
強い風が、小さな箱を持つ健太の背中に体当たりをした。
その風をめいっぱい感じながら、あの日を思い出していた。
琴子と結婚した日。
チャペルで誓いをした後、開かれた扉から差し込む光に向かって、これからの二人の未来を思いながら、バージンロードを後にした。
チャペルの外では、立ち合ってくれた方々の笑顔のアーチの中をくぐりながら、ライスシャワーや紙吹雪で祝福されながら歩いた。
僕達、最良の日だ。
後日、二人で確認したこの時の写真には、強い風に顔をゆがめる琴子ばかりが写っていた。
琴子は写真をみながら、かなり落ち込んだ様子だった。
「大切な日には、強い風が吹くのよ、いつもそうなの。」
寂しそうな顔だった。
私だけじゃないから、大丈夫だと思ったのになぁと写真を見ながら独り言のように小さく呟く琴子。
僕が信じられずにいると、タブレット端末から自分の電子アルバムアプリを起動させて、見せてくれた。
確かに琴子の言う通り、琴子の電子アルバムには、入学式や入社式、卒業式に成人式も、強い風に顔をゆがめる琴子が写っていた。
「君は、強風を呼ぶ女だね。」
茶して言う僕に、
「私は呼んでないけどね。」
残念そうに、そう答えた。
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