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この生活を始めて、分かったことがある。
タクヤはパン好きだったようだ。
パンは色鮮やかに見える。
おそらく、メロンパンが大のお気に入りだ。あのフォルムがやけに可愛らしく、掛かっているザラメがキラキラして見える。
タクヤは朝から赤ワインやらシャンパンを優雅に飲み、つまみにチーズをかじっているイメージだ。
ガリガリに痩せた体、日光と無縁な白い肌、明るい茶色に染まった髪をしていた。あの風貌でパン好きだったとは意外だ。
それに、野菜はあまり好きではないようだ。
特にピーマンとネギが苦手だったようで、黒々として、グロテクスな物に見えてくる。
お前は小学生か⁉とツッコミたくなる。
タクヤは僕にとっては神に近い存在だけど、妙な親近感を覚えた。
それに、タクヤの目を通してカラフルに見えるのは、好みの女性だ。
街を歩いている時、華やかな色をまとう女性を二人見かけた。
そこは、やはり男だ。少し安心する。
一か月間、タクヤの視覚で色付きに変わったのが、パンと好みの女性とギターを見た時だけだった。
街のネオンも退屈なセピア色で染まり、バラエティ番組もほとんどが白黒で、街を歩く人は好みの女性以外、みんな同じ顔に見えてくる。
フラと立ち寄った本屋も、居酒屋も、ラーメン屋にも関心なし。
時代の最先端を走っていた人なのに、興味を示す物があまりに少なすぎる。
やっぱり、タクヤは神に選ばれた才能の塊で、初めから持っていたチカラを発揮しただけかもしれない。
凡人とは違う。
スペシャルな才能の持ち主だった。
宗太は少しずつそう考えるようになっていった。
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