高木宗太の場合

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街に吹く秋風が心地いい。 寒くもなく、暑くもなく、快適な日曜日。 友達に誘われて繁華街にあるリサイクルショップへ行くことになった。 休日には珍しくタクヤの色眼鏡を掛けて出かけることにした。 この服装には、ゴツイ眼鏡のほうが良さそうだ思ったからで、タクヤの色眼鏡を掛けたいと思った訳じゃなかった。 タクヤの色眼鏡には、すっかり興味が薄れていた。 たまにはいいか、そんな気分でタクヤの色眼鏡を掛けて家を出た。 駅で友達と合流した。 こいつとは、高校からの付き合いで、気心が知れていて付き合いやすい。 変に気を遣う必要もないし、気兼ねが要らないで付き合える数少ない友達の一人だ。 これから向かうリサイクルショップはこいつの大のお気に入りだ。 定期的に、この店に通っている。 特にCDの取り扱いが多く、ここまでの品ぞろいは珍しい。 こいつはCD音源が好きだと言っているが、正直、気持ちが分からない。 僕にしてみれば、古めかしいグッズ以外の価値はないと思っている。 どうせ暇だし、たまにはいいか、そんな気分で毎回この買い物に付き合っている。 相変わらず、この店はすごい。通路にも商品が積み上がり、ごみごみしている。 すれ違う人を慎重によけ、雪崩が起きそうな商品に気を付けながら店内を歩く。 店の奥地にあるお目当てのCD売り場でみた光景は、宗太を驚かせた。 この店にあるCDタイトルの大部分が、鮮明に目に飛び込んでくる。 その勢いに押され、後退りした。それでも浮き上がるよう見えるCDのジャケットやタイトルの情報量の凄まじさに、宗太は立っていられなかった。 タクヤは、ここにあるCDの殆どを、耳にしている。 そうだったのか・・タクヤはありとあらゆる音楽を聴いていたんだ。 おそらく生活のほとんどの時間、音楽を聴くために使っていた。 無類の音楽好きだ。 それでだ。テレビや街で遊ぶことに興味がもてなかった。 そんな時間があるなら、音楽を聴いていたいと思っていたのかもしれない。 目に映るものだけで、音楽を感じるのは難しい。 タクヤの視覚が色あせていたのは、音楽が響かない世界しか見えなかったからだ。 宗太は、タクヤのすごさを改めて感じた。
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