白石健太の場合

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そんな僕の所へ、妻の妹である美穂子が訪ねてきた。妻を亡くして8か月が経った頃だ。 「健太さん、気持ちは分かるけどね・・」 そう言って、美穂子ちゃんはリビングに掛かるカーテンを開けた。 それから窓を開け、部屋の空気を入れ替えた。 リビングに差し込む光に、ハッとした。 まぶしい・・太陽の光を目にしたのは久しぶりだった。 僕は、いつからカーテンにも触れずにテレビが発する光だけで生きていたのだろう、そういえば、部屋に置かれた電波ソーラー時計も止まっている。 それも当然か、部屋に太陽の光が入らなかったからだ。 どうでもいい事が頭に浮かんでいた。 部屋が明るくなると、次は、部屋のひどい惨事が目に飛び込んできた。 スナック菓子のゴミやら、カップラーメンの残骸やら、ビールの缶に、脱いだ服が床に散乱していた。 自分でも驚く。足の踏み場もない状態とはこのことだ。 琴子がいないだけで、こんな状態になってしまうんだ・・ダメな奴・・他人事のように部屋の惨事をぼんやり眺めた。 「健太さん、この調子だとろくなもの、食べてなかったのね。」 この部屋の有様をみて、美穂子ちゃんが苦笑いをしている。 僕はなんと返事をしていいか分からずに、無言のままやり過ごしてしまった。 美穂子ちゃんは気にも留めていない様子で、気合いを入れるようにリビングから出て行くと、キッチンに置いてある大きなごみ袋を数枚抱えて戻って来た。僕がゴミ袋のありかを知ったのは、琴子がいなくなった後だったのに、そうか、美穂子ちゃんはゴミ袋がどこにあるのか知っていたんだ。 琴子が生きていた頃は、よく遊びに来ていたんだろう。 あえて言葉にはしなかったが、そう理解した。
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