高木宗太の場合

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宗太は、タクヤを理解した。 これほどストイックに音楽に耳を傾け、ピアノに愛情を注げる人が他にいるだろうか? そうだったのか。 タクヤは生まれ持った才能だけで音楽を作っていたんじゃない。 道理で、足元にも及ばないはずだ。 これじゃダメだ。今のままの僕じゃダメだ。 宗太は天を仰いだ。 その拍子に頭の中に、何か暖かいものがあふれ出していくのを感じた。 それは、少しずつだけど、確実に広がっていく。 「そうだ、メロンパンを食べよう。」 宗太は友達に声を掛けた。友達は目を丸くして宗太を見た。 「あれ?そばでしょ?宗太は、パンが嫌いじゃなかったっけ?」 宗太には分かっていた。 心の中でタクヤに向かってつぶやいた。 (タクヤの思考が僕に伝染していくんだ。大歓迎だよ、タクヤさん。) 「今日から好きになったんだよ。さっ行こう!」 「それじゃーさ、折角だから美味しいパン屋探しでもしようか?」 「いいね。そうしよう。」 宗太は歩き出した。
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