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山田めぐみの場合
山田めぐみ 18歳。
高校を卒業したばかりだが、美術系の学校には進学できず、浪人が決定している。
美術系の大学も、専門学校も競争率が高い。
ここ数年、この分野を志望する学生がやたらに増えた。
この分野は、機械仕掛けのAIに、仕事を奪われることはありえないから、どうしたって、この分野に人が集中していまい、異常とも思えるほど人気が過熱している。
おかげで、めぐみを迎えてくれる学校に出会えなかった。
めぐみの母の家は芸術一家。
おじいちゃんはデジタルアート界では有名人だし、おばあちゃんは、イラストレーターとして絵本の挿絵を描いている。
母の姉は写真家で、紛争地へ行って写真を撮っている。
めぐみの母も、モザイクアート作家で作品集なども出版したそうだが、実際はあまり仕事が無かったらしく、今は大人しく主婦をしている。
美術一族の一員としてめぐみも当然、美術の世界に興味を持つのは必至だった。
小さい頃から美術に触れて育っためぐみは、小学校でも中学校でも高校でも、その美術センスを高く評価された。そんなめぐみでも、美術系の学校の試験にパスするのはかなり厳しいと思っていたが、それなりに自信があった。
にもかかわらず、どの学校にも引っかかることなく残念な結果に終わってしまった。
悔しかった。
一浪させてほしい、両親にお願いをした。父も母も反対せず、笑顔で了承してくれた。
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