4人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
高橋家では、佐和子おばさんの一周忌が行われた。
高橋家のお墓は、見晴らしのいい小高い丘の上に広がる霊園の一角にある。
霊園の隣には散策できる公園があり、緑が綺麗に整備され、芝が生えそろっている。
花の頃が過ぎた緑が茂るアジサイが風に揺れて、空には夏色の雲が浮かんでいる。
この時期にしては珍しく乾いた風が吹き抜け、蒸し暑さを感じなかった。
高橋家の墓の前で行われた一周忌法要が無事に終わり、親戚一同で会食をする為に、予約をした店に移動した。
会食を予約した店は、洒落た懐石を出すと評判の店だ。
2階にある20畳ほどある部屋は梁がむき出しになっている作りで、窓からは、松の木と楓が植えられた小規模の日本庭園風の庭が真上から覗けるようになっていた。
席について献杯すると、目にも楽しい料理がテンポよく運ばれてきた。
久しぶりに会った親戚が揃い、お酒の席でもあったから、おじいちゃんも、親戚のみんなも上機嫌になった。
会も終盤に差し掛かった頃、佐和子おばさんの写真集が親戚たちに配られた。
「佐和子の最後の写真集だから、是非、見てほしい。」
おじいしゃんは、一人一人に写真集を手渡した。
「佐和子ちゃん、すごいのね。」
写真集を見ながら、親戚たちは思い思いに感想を言い合い、佐和子おばさんの功績に称賛を送った。
おじいちゃんは、笑っているような、それでいて泣いているような顔でみんなの様子を見つめていた。
写真集には、あとがきの後、最後のページに違和感のある写真がやけに小さく載っていた。
これを見つけた親戚のおばさんが、
「あら、この写真、光雄さんじゃないかしら?」
と言い出した。
親戚のおばさんの指摘を受けて、親戚一同で確認した。
「確かに光雄さんだ。」
光雄さんとは、佐和子おばさんから見たら、祖父にあたる人。
おじいちゃんのお父さんだ。
「佐和子ちゃん、光雄さんに可愛がられていたものね。だから、ここに載せているのかしらね。」
親戚しか知り様の無い写真に、みんなの会話が盛り上がった。
「それにしても、高橋家の長男は、光雄さんにどんどん似てくるよな。」
親戚にそう言われ、おじいちゃんは困ったように頭を掻いた。
「嫌だけどな、血筋だから。」
佐和子おばさんの一周忌は和やかなままに、終了した。
最初のコメントを投稿しよう!