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難関の美術大学に合格しためぐみは、おじいちゃんの家に居候をして半年が経っていた。
めぐみが通う学校から自宅までの距離より少し遠くなってしまうが、どうしてもアトリエが欲しかった。
自宅は、やや広い一般住宅だが、アトリエにするスペースなどない。
おじいちゃんの家は、部屋数も申し分ないし、その上広さもある。
ここに出入りする人も、置いてある美術品もすべて、一流品ばかりだ。
ここよりいい環境のアトリエはないと思う。
メゾネットタイプの作りになっているおじいちゃんの家は、リビングが吹き抜けになっていて、広い空間を贅沢に使っている。
リビングに足を下ろしている階段を上がると、二階に二部屋あり、それぞれめぐみの部屋とめぐみ専用のアトリエとして使わせてもらっている。
元は、おじいちゃんとおばあちゃんのそれぞれの寝室だったが、階段を上がるのが億劫になり、今は一階にあった客間を改装して寝室として使っている。
めぐみがおじいちゃん家に居候するようになってから、母がちょくちょく顔を出すようになった。
元は母の実家だけど、佐和子おばさんとめぐみの母が、この家を出て行った後に建て直している。
だから、母も佐和子おばさんもこの家には大した思い出はないのだと聞いたことがある。
おばあちゃんは、佐和子おばさんの一周忌が終わったころから、布団に伏せることが多くなり、部屋に閉じこもる事が多くなった。
元々、体の調子がいい方でなかったが、ここのところ、更に悪化したように見える。
めぐみは心配でたまらなかった。
顔を出した母に相談すると、
「きっと、佐和子の一周忌が終わって、気が抜けてしまったのね。母はいつも、佐和子ばかりを心配している人だったから。」
めぐみの母がそっけない顔で答えた。
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