山田めぐみの場合

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それから2か月後、磯部と名乗る男とその上司だという人が試作を持って、やって来た。 まず、磯部と名乗る男が頭を下げた。 「大変申し上げにくいのですが、佐和子さんの思考はかなり特殊でした。 ですので、結論から申しますと、一般販売にはかなりのリスクを伴い、こちらは残念ながら商品に出来ないとの判断が下りました。 ここまで、協力して頂いたのに、誠に残念です。」 「はぁ、そうですか。」 おじいちゃんは拍子抜けした顔で返事をした。 「佐和子の思考が特殊だと、どうして色眼鏡が作れないの?」 おばあちゃんは、磯部と名乗る男に不満げな声をぶつけた。 「ドナーである佐和子さんの思考が、そのまま視覚の中に写り込みます。 黒いサングラスをしてみると、すべての色が黒く見えると一緒で、佐和子さんの思考のフィルターで物をみると、つまり佐和子さんの思考を体現してしまうのです。佐和子さんの思考は、かなり特殊です。 我々もどのような事態になるのか予測が出来ません。 しばらくは研究対象になります。 お母さま、立ってのご希望でございましたので、3セット、試作品をお作りしました。こちらは、プレゼントでございます。 どうぞ収めください。 丹念にバグ処理をしてありますので、不都合な事はあまりないと思いますが、こちらの色眼鏡はとくに、長時間の使用は避けてください。 異変を感じた時はすぐに、使用を中止してください。 くれぐれも慎重に願います。 その他の事は、こちらの冊子に書いてございますので、ご参考になさってください。それと修理等は、販売店までお知らせください。 こちらの眼鏡で、お客様に不利益な事が生じても、責任を負いかねますので、ご注意ください。」 おばあちゃんは佐和子色眼鏡を受け取った。 それから書類のやり取りを交わし、早々に二人は腰を上げた。 帰り際の玄関で磯部と言う男とその上司が、もう一度深々と頭を下げた。 「申し訳ございませんでした。」 磯部という男とその上司はそういうと高橋家を後にした。
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