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高橋家は、みんなで胸をなでおろした。
これで、良かったんだとみんなが思った。
“佐和子が商品棚に並ぶなんて、寒気がする。”
おじいちゃんは、酒を口にするたびにそう言っていた。
一番ほっとしているのは、おじいちゃんだろう。
リビングのテーブルに置かれた佐和子おばさんの色眼鏡が綺麗に包装されお行儀よくならんでいる。
おじいちゃんは無言でおばあちゃんに一つを渡した。
おばあちゃんは泣きそうになりながら受け取った。
それから、めぐみの母に電話を掛けた。
「ああ、祥子か。さっきあいつらが来たんだ、色眼鏡を持って。お前はいるのか?」
少しの沈黙のあと、
「そうか、分かった。大丈夫だよ。・・みんな落ち着いている。そうだ・・商品には向かんそうだ。ああ・・そうだ、それじゃ。」
そう言って、電話を置いた。
「お母さんは何て?」
めぐみが問いかけた。
「祥子は要らないってさ。」
おじいちゃんは、色眼鏡に視線を落として見つめている。
行き場のない捨て猫でも見る様に、切ない顔だ。
「私が一つ貰っていい?」
めぐみが申し出ると、おじいちゃんは無言のまま一つを差し出した。
残った一つを丁寧に金庫にしまい、鍵を掛けた。
おじいちゃんの背中から、もう誰にも触れさせないと誓いを立てているように見えた。
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