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めぐみは佐和子おばさんが戻ってきてくれたようで嬉しかった。
佐和子おばさんの色眼鏡は、めぐみにいろいろ語り掛けてくれるはずだ。
また、佐和子おばさんと話が出来る。
それでいて、一流の写真家の視覚だ。
芸術家の卵としては、興味もある。
すごい武器を手に入れた。そう思えた。
めぐみは通学の時にだけ、佐和子眼鏡を使用した。
佐和子おばさんの視覚で、とにかくたくさんの物を見たかったからだ。
思った通り、佐和子おばさんの視覚はとても不思議で、女の人や子供、とくにおばあさんは鮮明に見える。
それなのに、男の人はほとんど目に入らない。
特に年配の男性は黒ずんで影の様にしか見えない。
街路樹や人知れずさく雑草の花に、空模様もくっきりと鮮明に見えるのに、建物はほとんどが色だけしか見えず、印象派の絵画の様だった。
でも、道路標識や案内板、変わった形の街灯や橋、それにポストやマンホールの模様は鮮明に見える。
きっと佐和子おばさんは、常に自分がどこにいるのかを把握する癖がついていたんだと思う。
紛争地を歩いていた人だから、これは職業病かもしれない。
そして、街にあふれる看板や広告もほとんど色にしか見えないが、食べ物屋の看板だけは急にピントが合う。
佐和子おばさんらしい、この時ばかりはつい笑ってしまう。
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