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夕方、駅のホームで電車を待っていた。
日が傾き、そろそろ夕暮れ時を迎える。今日のご飯は何がいいかな?
たまにはハンバーグがいいかな。
めぐみはそんな事を考えていた。
月曜日はめぐみが夕飯の支度をする担当になっている。
これからスーパーに寄って、食材を買う都合がある。
“ギィー”電車が物凄い悲鳴を上げた。
音の方に目をやると、丁度、中学生くらいの女の子が電車に身投げしている瞬間が目に入った。
電車の音に紛れて、キャー、ギャー、危ない・・いろんな声がまじりあい、異様な音となって響いた。
めぐみはただ、身を固くする事しか出来なかったが、目は一秒も見逃すことなく女の子がホームに落ちていくさまを見ていた。
この瞬間、哀れな女の子は怪しげで、それでいて優雅で、ゾっとするほど美しく、引き込まれる恍惚そのものに見えた。
辺りに飛び散る血は、桜吹雪に匹敵するほどの可憐さをまとい、華やかで幻想的。花魁が誘惑してくるように、強烈にあっちの世界へ引き込もうとしてくる。
吐き気を感じた。
体の力が抜ける。
気分が悪い。
体は耐え難い苦痛を感じているのに、目はこの光景から背ける事ができない。めぐみは怖くなった。
ホラー映画も怖くて見られない私が、悲惨な光景に目を奪われている。
めぐみはかなり動揺した。
その後の事は憶えていない。
気が付いたら、おじいちゃんの家のすぐ近くまで来ていた。
見慣れた街灯の下に続く見慣れた風景に、少しホッとした。
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