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玄関を入ると、珍しく家の中は暗い。
「ただいま・・」
いつものように家に上がる。
おじいちゃんの家は玄関も廊下も自動でライトが付くようになっているから、人が通れば明るいはず。
こんなに暗いなんてどうしてだろ?
めぐみは不思議に思ったが、深くは考えなかった。
めぐみの頭の中は、さっき見た身投げした女の子でいっぱいだった。
悲惨な光景が目の奥にこびり付いていて、目を閉じるとあの子が見えてきて気分が悪くなる。
リビングに繋がるドアを開ける。
暗がりで何かが動いている。
おじいちゃん・・?
「ギャー、止めて。」
めぐみは悲鳴を上げた。
暗がりでおじいちゃんがおばあちゃんに馬乗りになって、顔を殴りつけている。
めぐみの声で、一瞬二人の動きが止まった。
おじいちゃんがその隙を見て、おばあちゃんの掛けている眼鏡を取り上げ、そっと離れた。
「めぐみ、落ち着いて聞いてくれ。その眼鏡だ。その眼鏡を外しなさい。大丈夫だから、めぐみ。言う事を聞きなさい。」
おじいちゃんが鬼の形相で近づいてくる。
「来ないで、お願い・・それ以上近づかないで・・。」
ますますおじいちゃんが恐ろしい化け物に見えてくる。
怖い・・助けて・・。
めぐみは追い詰められていく。
おじいちゃんはさらに近づいて来る。
恐怖で震える足を何とか奮い立たせて、後ずさりする。
(殺せ!早く殺さないと、お前がやられる。殺せ!殺せ!)
強い衝動がめぐみの中を突き抜ける。
めぐみは何が何だか分からず、手に触れるものをおじいちゃんに投げつけた。
「めぐみ、眼鏡だ。眼鏡を外すんだよ。」
恐怖で震える体で、なおも抵抗する。
おじいちゃんは、めぐみに飛び掛かるように抱きとめると、眼鏡を外した。
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