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あの佐和子おばさんが虐待されていたなんて・・
それに殺人まで・・とても信じられない。
おばさんはいつも明るくて聡明で、前向きな人だ。
ユーモアセンスもあって、笑顔が可愛い人だ。
そんな佐和子おばさんと共存していたという凶暴な人格。
佐和子おばさんは、凶暴な人格を起こさない様に生活していたと思う。
実家に顔を出すことはなかったようだし、おばさんの視覚の中に男の姿はほとんど存在感がなかった。
佐和子おばさんはなるべく心の起伏をさけ、平常心で過ごすことを心掛けていた。そうやって、佐和子おばさんは凶暴な人格と生きていた。
そして、色眼鏡になったおばさんの視覚の中にも、消える事なく居座り続けている。凶暴な人格は、残酷なシーンやおじいちゃんを見る事で、目を覚ましたんだと思う。
凶暴な人格は、強い意志とこだわりを持って、おじいちゃんを殺せと私に語り掛けてきた。
凶暴な人格の源であり、生まれた理由だった人におじいちゃんが似ていたからだと思う。
もしも佐和子おばさんの色眼鏡が発売されていたら、おじいちゃんは佐和子おばさんの眼鏡を買った人に、命を狙われていたかも知れない。
だけど、私は知っている。
色眼鏡の中の凶暴な人格は、実際に手を下せるような力はなかった。ただ命じるだけの存在だ。
だけど、おばさんの中にいた頃は、もっと強い力を握っていたはずだ。
少しの油断で、佐和子おばさんを一気に黒に塗りつぶすような破壊力があった。もしかしたら、大勢の人に向けて殺せと命じていたのかもしれない。
佐和子おばさんは自分を見失わない様に常に冷静でいる事に努力を惜しまなかったはずだ。
それが、唯一佐和子おばさんが凶暴な人格の佐和子おばさんと向き合うための武器だった。
本来のおばさんは、凶暴な人格が放つ意思や衝動と闘いながら、ナイフの代わりにカメラを持った。
「今、悩んでいる事は、いずれ役に立つ武器に変わるんだよ。」
おばさんはそう言っていた。
佐和子おばさんは、もう一人の自分とせめぎ合いながら、それを自分の糧に置き換えてきた。
本当にすごい人だったんだね。佐和子おばさん・・
めぐみは、魂が揺さぶられるのを強く感じた。
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