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菅原雄太の場合
菅原雄太は、色眼鏡屋の企画部に所属している。
色眼鏡屋の本社の原型はバイオベンチャーだった。
急拡大に成功して現在は、その会社の支援を当てにして、子会社になっている。
健太が所属するこの部署は、新設されてから日が浅く、会社の中でもそれほど地位は高くない。
そのせいか、この部署が使えるスペースはあまり広くない。
しかも、日の当たらない北側の一室をあてがわれている。
20畳ほどの部屋には机が12個並び、壁一面に並べられた書類棚が少しのスペースもなくぎっちりと置かれ、見るからに息苦しい空間だ。
向かいの席では、磯部が楽しそうに電話で話をしている。
息苦しいのは書類に埋もれたこの部屋のせいじゃなくて、こいつがいるからだ。菅原は磯部を苦々しく思っている。
磯部は、目の付け所が良く、この部のエースとして扱われている。
最近も、磯部が口説き落とした写真家の視覚に、研究チームは色めき立った。珍しい個体だった。磯部にしてみれば、偶然のラッキーだったはずだ。
天も磯部に味方しているとしか、言いようがなかった。
ついている奴は何をやってもついている。
菅原は苦虫を噛み潰している。
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