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“賢くなる色眼鏡”入荷待ち。
この色眼鏡の販売は、通販サイトやテレビショッピングに拡大していた。
反響のデカさに生産が追い付かず、予約待ちが日に日に増えていった。
康太色眼鏡は、異例の大ヒットになっていた。
世間一般に、康太という名前は出していない。
あくまでも賢くなる色眼鏡として売り出している。
康太の両親の意向でもあったが、コンセプトを明確に打ち出すべきだという社内の意見でもあったため、この商品名に決まった。
この色眼鏡は、ただ見たいという欲求だけの意識下で物を見せ、カメラの様に完璧に見える視覚に仕上がった。
欲求に従って見たものは、頭に残りやすい。
だから、康太色眼鏡を掛けて勉強すると頭への吸い込みが抜群に良くなる。
記憶力が向上するのだ。
元々生きている間には使う事がなかった全盲者の視覚だけに、苦手意識や、得意、不得意の差別もない。
それに、趣味嗜好や意思を視覚に一切反映させていないから、長い時間の使用でも、ドナーの意識や意思に影響され、精神を病んでしまう危険性はない。
問題があるとすれば、脳へ流れる情報量の多さに、脳が疲れてしまうくらいだろう。
康太色眼鏡の研究は続いている。先入観を払拭する色眼鏡は、今はまだ研究途上にあるが、実現する日も近い。
あの時、田中家で説得中、相馬が何気なく言った思いつきが、実現に成ろうとしている。
「菅原常務、TRコーポレーション開発の専務様よりお電話でございます。」
「はい、分かりました。繋いでください。」
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