4人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
色眼鏡を作るには、後頭葉と前頭葉の一部、側頭葉の一部、脳幹の一部の摘出が必要になる。
脳の視覚部分は機能をなくすが、その他の機能は大部分が維持される。
しかし、一度摘出をするともう二度と元には戻らない。
慎重なってしまうのは当然だ。
琴子が突然倒れ、運ばれた病院で、数回の手術が施された。
結局は効果もなく棺桶に収まる琴子には、痛々しい傷がいくつも残った。
その姿を目にした時、ただ虚しくてやるせなかった。
何度も痛い思いをさせたのに、ごめん。僕は謝る事しか出来なかった。
ことあるごとに棺桶の中で眠る琴子の顔を思い出す。
あの日を忘れる事は決してないだろう。
そして、死んだ後も、琴子を切り刻むことになってしまう。
色々考えた。色眼鏡を作ろうと決心するまで、2か月を要した。
結局は、琴子を近くに感じたかった。
それに、こんな生活もそろそろ終わりにしなければならない。
琴子のいない生活を始める為の区切りが欲しかった。
最初のコメントを投稿しよう!