第四章

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イチの耳も尖っていて、それを見たから両親もすぐに魔法が使えないと思わなかった。 人間でも魔法使いでもない不思議な存在だった。 それでも変わらず両親はイチを愛したがイチに絶対に誰にもこの事を話してはいけないと言った。 話せばきっとイチは今までのように友達と遊べなくなる…気味悪がってイチが悲しむ現実が待っていた。 だとしたらイチはそのまま魔法使いとして過ごした方が幸せだろう。 ……たとえいつかバレたとしても… そんなある日の事、一人の子供が倒れた。 あの子は確かよくイチと遊んでくれる女の子だ。 一緒に遊んでいた子の証言によると突然女の子が苦しみだして魔力を暴走させて倒れたという話だった。 魔力の暴走、本来なら大人に多い筈だった……子供は魔力が少なく暴走するほどの魔力があるとは思えない。 稀に力が強い子供が生まれるがそう言う子なのだろう。 暴走すれば魔力が消える…そうなれば女の子は死んでしまうだろう。 そんな時イチが何も言わず女の子に近付いた。 周りはまた暴走するかもしれないがイチを止めようと声を掛けたが全く聞いていない。 誰も暴走の巻き添えはごめんだからイチ達に近付こうとしない。 両親はイチに駆け寄ろうとするが周りに危ないからと引き止められる。 やがてイチは女の子の傍に行き抱き抱えた。 何をするのか周りは静かに見つめる。 何を思ったのかイチは女の子に口付けをした。 その時足元に黄色い魔法陣が現れた、見た事がないものだった。 暴走して消えかかっていた女の子は奇跡を起こしたかのようにしっかりと目を開けた。 その時の事をイチに聞くと本人も分からないが何故か体が無意識に動いたと言う。 それから女の子は元気になり、イチが魔力を与えたと思われた。 イチはきっと自分で使える魔力はなくても他人に与える魔力があったとしてゼロの魔法使いと呼ばれるようになった。 魔法使い達が暴走で死なないであろう未来が待っている、ゼロの魔法使いは貴重な存在として語り継がれてきた。 あれからゼロの魔法使いの力を持つ者が少しずつ増えてきた。 しかしそれと同時にゼロの魔法使いを使い悪さをする者達も増えていた、その血肉を喰らうと不死になるだとか真意は不明だ。 そして年を重ねるごとに増えたと思ったゼロの魔法使いが減り、絶滅した。
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