もしもし、お隣さん

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(ダニエル、がっかりしたかな……)  ふっつりと、壁の向こうから声は聞こえなくなった。  それがまるで、ダニエルとなつながりが絶たれてしまったように感じられて、つらい。  冷静な頭ならそんなことはないとわかるのに、風邪で弱った心と身体では、そんなふうに考えてしまった。  それから夜半にかけて、風花の熱はどんどん上がっていった。  歯の根が合わないほど、激しく身体が震える。それなのに口の中や眼球は煮えるように熱くて苦しい。  本当ならもっと布団を重ねたほうがいいことも、何か飲んだほうがいいこともわかっている。でも、あまりに苦しくて、身体を起こすことさえままならなかった。 (……朝まで寝て、それでも無理だったら救急車を呼ぼう。……ううん、だめだ。風邪くらいで呼んじゃ。それなら、誰か友達? でも、みんな働いてる……うつしたら大変だから、だめだ……)  頭は冷静に働かずとも、自分がわりと命の危険に瀕しているということはわかっていた。誰か助けを呼ばなくてはいけないということも。 (病気のとかにひとりぼっちって、つらい。……ダニエルが本当にお隣さんだったらよかったのに。そしたら、助けてって言えたのに……)  
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