2人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あったかい」
「そうか。保温の魔術をかけておいてよかった」
汁椀にお粥をよそうと、ダニエルは鍋を抱えてじっと、風花がそれを食すのを見守ってくれていた。ただ、それだけのことがすごく嬉しくて、ちびちびと食べながら、風花は自分の身体に力が戻ってくるのを感じていた。
お粥は米を炊いたものではなく、パンを牛乳でほんのり甘く煮たものだった。優しい甘さが身体に沁みていき、汁椀を一杯空にする頃には、少し楽になっていた。
「ダニエル、ありがとう。……来てくれなかったら、もしかしたら危なかったかも」
用意してもらっていた異世界製の苦い薬をミネラルウォーターで何とか飲み干すと、ダニエルは目に見えてほっとした。
銀縁眼鏡が似合うクールな顔立ちなのに、そう言った顔はとても優しくて柔らかくて、それを見た風花の胸はキュンとなった。
でも、こんな風邪をひいた姿でダニエルを前にしていると思うと、悲しくなってくる。
「ダニエルに会いたいと思ってたけど、会えて嬉しいけど……こんなボロボロじゃないときがよかったなあ……」
ぽろりと本音がこぼれると、涙も一緒になってこぼれた。
こうして目の前にすると、改めてわかる。
最初のコメントを投稿しよう!