もしもし、お隣さん

12/14
前へ
/14ページ
次へ
「……あったかい」 「そうか。保温の魔術をかけておいてよかった」  汁椀にお粥をよそうと、ダニエルは鍋を抱えてじっと、風花がそれを食すのを見守ってくれていた。ただ、それだけのことがすごく嬉しくて、ちびちびと食べながら、風花は自分の身体に力が戻ってくるのを感じていた。  お粥は米を炊いたものではなく、パンを牛乳でほんのり甘く煮たものだった。優しい甘さが身体に沁みていき、汁椀を一杯空にする頃には、少し楽になっていた。 「ダニエル、ありがとう。……来てくれなかったら、もしかしたら危なかったかも」  用意してもらっていた異世界製の苦い薬をミネラルウォーターで何とか飲み干すと、ダニエルは目に見えてほっとした。  銀縁眼鏡が似合うクールな顔立ちなのに、そう言った顔はとても優しくて柔らかくて、それを見た風花の胸はキュンとなった。  でも、こんな風邪をひいた姿でダニエルを前にしていると思うと、悲しくなってくる。 「ダニエルに会いたいと思ってたけど、会えて嬉しいけど……こんなボロボロじゃないときがよかったなあ……」  ぽろりと本音がこぼれると、涙も一緒になってこぼれた。  こうして目の前にすると、改めてわかる。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加