もしもし、お隣さん

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 壁越しの声に、日々惹かれていっていたのだと。ダニエルのことが好きなのだと。  だからこそ、会えた喜びと、きちんとした状態で会いたかったという悔しさがないまぜになる。  一度こぼれた弱音と涙は、次々あふれて止まらなくなる。  けれど、そんな風花を見ても、ダニエルの柔らかな表情は変わらなかった。それどころか、より一層優しくなる。 「私はむしろ、こんなふうにフウカの心が弱っているときにそばにいられてよかったと思う。壁越しでは、こうして看病することも、涙を拭ってやることもできなかったからな」  そう言って、ダニエルの指がそっと風花の涙を拭う。それから、優しく頭を撫でた。 「身体が弱ると心も弱る。今は、ゆっくり休みなさい。明日から、またいろいろ始めたらいい」 「……? おやすみなさい」 「おやすみ」  よくわからなかったけれど、ダニエルの優しくて穏やかな声は不思議な強制力があり、風花はそれに素直に従った。そうすると、あっという間に眠気ざしてくる。  眠りについても、あの寂しさや焦燥感のようなものはわいてこなかった。  ダニエルがそばにいてくれるという安心感に包まれて、風花は朝までぐっすり眠った。
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