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「お隣さんって、どんな人だろ?」
一晩経つと冷静になって、そんなことを考える余裕が生まれた。
思えば、隣に誰が住んでいるかなんて今まで意識した事がなかった。
今の部屋には社会人になってから暮らし始めたけれど、気にすることといえば防犯のことのみだ。女のひとり暮らしであることを気取られるほうが厄介だからと、両隣の部屋に挨拶もしていない。
だから、これからもきっと誰が住んでいるかなど気にすることはないと思っていたのに。
出勤準備を整えた風花は、いつもより心持ち早く家を出て、エントランスホールへ向かった。集合ポストを見れば、隣人の情報が何かわかるかもしれないと思ったのだ。
外国人の(たぶん)、男性としかわかっていないのは何となく居心地が悪いから、ほんの少しでも何かを知ることができればと。
「……これって、どういうこと?」
声がした隣室のポストには、ガムテープで目張りがしてあった。これは確か、空室のポストにチラシやダイレクトメールを入れられないための不動産屋の対策だと聞いたことがある。こうでもしておかないとあっという間に紙類で溢れて、大変なことになるかららしい。
つまり、そんな対策がポストにされているということは隣室には今、誰も住んでいないということだ。
それなら、昨夜、風花が話した相手は誰だったのだろうか。
「……」
背筋がゾクッとして、風花はその場を足早に立ち去った。そのままそこにいたら、考えなくてもいいことまで考えてしまいそうだ。
幽霊なのか、はたまた不法侵入者なのか。考えまいとするのに、心霊番組や人間怖い系の都市伝説を思い出してしまう。
(でも、おどろおどろしい幽霊って感じでもないし、かといって住むところがなくて勝手に入り込んでくるってふうでもない気がする。それにうちのマンションは一応、オートロックだし……)
怖いという気持ちが一周回ったあとはそうして冷静になることができたけれど、結局あまり仕事に身は入らず、また課長に怒られてしまった。
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