もしもし、お隣さん

6/14
前へ
/14ページ
次へ
 お隣さんの名前は、ダニエル。  魔術師で、歳は二十五。魔術学院の研究室に籍を置きつつ、それだけでは食べていけず教鞭を取っているという。  研究テーマは、時空の調整によって異世界との行き来を可能にできるか、ということらしい。  まとめると、そんな感じだ。 「私の名前は、風花です。職業は会社員、歳は二十四です」 『そうか、フウカ。そろそろ時間のようだ。次はまた、もう少し長く交信できるようにする』  風花が短い自己紹介をすると、制限時間になってしまったようだ。 「あの、ダニエル。おやすみなさい」  間に合うどうか、一応声をかけてみた。 『おやすみ、フウカ』  消え入りそうになりながらも、ダニエルの返事が届いた。  ただそれだけのことに、風花の胸はぽっと温かくなる。 (久しぶりに、誰かに「おやすみ」って言われたな)  そうして、風花とダニエルの奇妙な交流が始まったのだった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加