第一話 嵐の夜

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 されども、十九とまだ若きお鶴にとって、これが待ちに待った初めての出産だった。 「ワシだって、おめえの事はわがっている。よおく、わがっている」  老婆は乾いた唇をぎっと噛み締めた。  お鶴は賢く、器量も気立ても良い。余所の幼子たちの面倒も率先してみる。そんなお鶴を、老婆は自分の孫のように可愛がっていた。蚕の糸挽きも、機織のやり方もお鶴に教えたのは、この老婆だった。  じろり……。  老婆は産婆に抱かれた赤子を睨む。  もしも、飢饉が起きなかったのならば……。  お鶴のお産が二、三年後であったならば……。  と口惜しむしかなかった。老婆は女衆における中心的存在。村の決まりに従って、子を産まんとする女が皆、子返しをするか、検分する役目を担っていた。お鶴だけを特別扱いすれば、他の女たちに示しが付かない。ましてや、当の赤子は成長した後もなお、村の者たちから白い目で見られることになる。  ならば……  子返す。  間引く。  今この場で、殺すしかないのだ。  泣き声を聞けば聞くほど、しっかと握った小さなこぶしを見れば見るほど、母親は勿論、藁を口に押し込もうとする産婆とて心が締め付けられる。そうなれば、子返しはますます困難になってしまう。  町の坊主や医者などは、     
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