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されども、十九とまだ若きお鶴にとって、これが待ちに待った初めての出産だった。
「ワシだって、おめえの事はわがっている。よおく、わがっている」
老婆は乾いた唇をぎっと噛み締めた。
お鶴は賢く、器量も気立ても良い。余所の幼子たちの面倒も率先してみる。そんなお鶴を、老婆は自分の孫のように可愛がっていた。蚕の糸挽きも、機織のやり方もお鶴に教えたのは、この老婆だった。
じろり……。
老婆は産婆に抱かれた赤子を睨む。
もしも、飢饉が起きなかったのならば……。
お鶴のお産が二、三年後であったならば……。
と口惜しむしかなかった。老婆は女衆における中心的存在。村の決まりに従って、子を産まんとする女が皆、子返しをするか、検分する役目を担っていた。お鶴だけを特別扱いすれば、他の女たちに示しが付かない。ましてや、当の赤子は成長した後もなお、村の者たちから白い目で見られることになる。
ならば……
子返す。
間引く。
今この場で、殺すしかないのだ。
泣き声を聞けば聞くほど、しっかと握った小さなこぶしを見れば見るほど、母親は勿論、藁を口に押し込もうとする産婆とて心が締め付けられる。そうなれば、子返しはますます困難になってしまう。
町の坊主や医者などは、
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