第1話 真夜中のラジオ

1/50
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ

第1話 真夜中のラジオ

空への伝言 一 真夜中のラジオ  真夜中にかかるラジオはなぜか特別な感じがして、胸が高鳴ったのを覚えている。受験勉強をするとき、または、深夜の仕事の帰り道に車の中で。誰もが一度は聞いたことがあるのではないだろうか。人によって真夜中のラジオとのかかわり方は違うものだろう。だが、そこにある確実な安心感と、冒険心をくすぐる何かは感じたことがあるはずだ。  そんな感覚を感じられる感性、心。そんなものがまだ備わっていたころの話を、これからしようと思う。  高校二年生になったばかりの高橋輝(たかはし あきら)は、夜十時まで、飲食店でアルバイトをしていた。朝早く学校へ行き、サッカー部の練習を朝と放課後にこなしてからアルバイトに行っていた。休む暇もなく職場へ行ってしまうので、学校で行う授業の予習や復習は帰ってから深夜にやっている。寝るのは十一時半を回ってしまう。同じ家に住んでいる母親もパートに出ていて、朝早くから夜遅くまで仕事をしている。輝ほど派手な仕事ではないが、電子部品を組み立てる工場の勤務は毎日忙しかった。父親は、輝が幼いころに交通事故で亡くなっていた。母は父のことが忘れられないのか、職場に出会いがないのか、再婚はしていない。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!