第2話 青い薔薇

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「危ない、ローズさん!」  タイミングが早すぎる。これでは人数の多い密猟者にやられてしまう。しかしそれは輝に関しても同じことだった。声を上げてしまった時点で彼らに気づかれてしまったからだ。密猟者たちは四人いた。彼らは、震える手で自分たちに猟銃を向けるローズに近寄ってきた。声を上げた輝も位置を特定されてしまっていたので、出ていくしかなかった。そこで輝は出ていくときにおじさんのほうを見た。彼も見つかってはいないだろうか。そう思って隣の茂みに目をやった。するとそこには誰もいなかった。猟銃もない。忽然と姿を消していた。  不思議に思ったが、今はそれにとらわれている場合ではない。輝はすぐに目の前にいるローズに視線を戻した。すると、今度はローズが怯えた目で何かを見つめていた。  どうしたのかと問いながらローズの視線の先を見ると、密猟者たちが全員、いつの間にか倒れて気を失っているのが見えた。 「これは?」  輝の問いに、ローズは何も言わずに首を振った。口に手を当てて怯えている。  すると、どこからかおじさんが現れた。この人は何者なのだろう。そして、いったいどこで何をしていたのだろう。  おじさんは、輝たちの前に現れるとすぐに、倒れている人間たちの体に触れた。そして、輝たちのもとへ来ると、震えているローズの猟銃を受け取って地面に置いた。そして、その場に座らせて輝を呼んだ。 「彼女は闇を見た。話を聞いてやるといい」
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