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そう言うと、自分が来ていたジャケットをローズの肩にかけてやった。
「彼らは? 密猟者たちはどうなったんです?」
輝が聞くと、おじさんは右手を挙げてひらひらさせた。
「気絶しているだけだ。なんとでもなる」
おじさんは、そう言って三人分の猟銃を片付け始めた。また、禁猟区内のパトロールにも連絡を取るために、無線を使って連絡を取り始めた。輝は、ローズが落ち着くまで待って、彼女の話を聞くことにした。
しばらく経って、ローズの呼吸が落ち着いてくると、彼女は一言目にこう言った。
「鏡が、見えた」
そして、輝がきちんと話を聞く態勢であることを確認してから、話し始めた。
「鏡の中の自分が、笑いながら猟銃を撃ったのよ。するとその弾丸が確実に密猟者たちを殺していった。ひどい光景だったわ。何が何だか分からなかった。鏡の中の私は、なりふり構わずに、彼らの死体を踏みつけた。恐ろしくなって叫んだら、その叫び声で鏡が割れたの。そして、現実に戻ってきたら、私は銃を構えたまま、気絶した密猟者たちの前に立っていたわ。手はしびれて、肩が痛かった。訳が分からないわ、いまも」
確かに、訳の分からない話だ。しかし、これで輝は彼女のことが少しわかった気がした。
「ローズさん」
輝は、震えるローズの肩に手を置いた。
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