第2話 青い薔薇

60/65

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
 ローズは、真剣な瞳で輝にそう問いかけた。しかし、輝はその言葉に首を横に振るしかなかった。 「俺にそんな力はありません。ただ、みんなが力を合わせれば、できないことはない。そう思います。そのためにはあなたの力も必要なんだと思います」  輝一人の力では到底太刀打ちできない。それだけ、密猟者のもととなっている問題は大きく、深い根を張っていた。しかし、ローズほどの力を持っている人間や、様々な人の力を借りれば、おそらくは少しでも変えていくことはできる。今の輝にはそう思えた。 「俺は、あなたにそれを知ってほしかった。だからあえて猟銃を持ってここに来て、おじさんに車を止めてもらってから出てきた密猟者たちをボコボコにして、そこであなたに銃を向けてほしかった。自分が今何をしようとしているのかを知ってほしかった。こんな形にはなりましたが、誰一人犠牲を出さずにそれができたことは、結果的に良かったことなんでしょう」  輝がそう言うと、ローズは泣いた。自分を思ってくれる人間がいる。自分を必要としてくれる人間がいる。そして、何より自分の本当の性格をどこまでも信じていてくれた。ローズが、本当は人殺しなどできない人間だということを信じていてくれた。それがうれしかった。 「輝、ありがとう。青い薔薇のシリンとして礼を言います」  涙を拭いて、ローズは笑顔を見せた。  その笑顔は、日差しの強い草原の中にあって、さらに光輝いていた。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加