第2話 青い薔薇

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 輝とローズは、遠くに置いてあった自分たちのトラックで町に帰った。おじさんとは草原で別れた。一人で、しかも車もないのに大丈夫なのかとも思ったが、ローズが大丈夫だというのでなんとなく納得した。ローズを連れてホテルに着くと、町子やフォーラが駆けつけてきた。輝もローズも無事であることを確認すると、フォーラがローズを見て、こう言った。 「おかしいわ。霧が晴れてる」 「霧?」  輝が聞き返すと、フォーラは少し、考えこんだ。今ではローズの存在も輝の気配も嫌というくらいに感じ取ることができる。しかし、先程までは霧の中を探しているようで、二人を探そうにも探すことができなくなっていた。これは誰か、フォーラより強い力を持つ何者かが妨害したとしか考えられなかった。しかし、月のシリンであるフォーラより強い力を持つ存在は限られていた。惑星間渡航者と、地球のシリン、そして、風の刻印を持つ二人のシリンだけだ。だが、彼らがフォーラから輝たちを隠す理由が思い浮かばない。 「霧のことはまた考えるわ」  何を言っているのかわからない、そんな顔をしている輝とローズをそのままにして、フォーラは一人立ち直った。いま、そんなことを考えても仕方がない。そして、今やるべき事案は他にあった。それを解決するのが先決だ。
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