第2話 青い薔薇

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 そうよ、と、フォーラが言うと、今度は褐色黒髪の女性が丁寧にあいさつをして自分の名前と白人男性の名前を名乗った。 「見るもの、戻すものよ、初めてお会いする。私は風の刻印を持つ巫女・クチャナ。二千年以上前よりアメリカ大陸に住み、タワンティン・スーユの滅亡を見届けた者。そして、こちらは私と同じく、風の刻印を持つ長老、セイン・ノクス。彼もまた二千年以上前からブリタニアに住み、古代ローマ帝国の滅亡を見届けた者。風の刻印は歴史の傍観者たるものの証。よろしくお願いする」  クチャナとセインは、自己紹介の後、輝と町子に握手を求めてきたので、二人は快く返した。すると、フォーラが少し緊張した面持ちで二人をロビーのソファーに座らせた。 「いったい何があったの? あなた方が、管轄地であるペルーやスコットランドから離れてここにくるなんて」  すると、二人の顔が曇った。クチャナに至っては焦りまで感じさせた。黒髪にしては珍しいその碧眼が揺れている。 「クチャナの妹にして、山の女神といわれている、アンデス山脈を統括する山のシリン、クエナが、忽然と姿を消しました。一緒に住んでいた村の者の話では、黒い服の男たちが考古学者と一緒にどこかへ連れて行ったのだと」
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