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第3話 粉挽き小屋
三、粉挽き小屋
セインとクチャナを伴って英国に帰った輝たちは、ロンドン郊外の田舎にある屋敷へと二人を案内した。そこは一つの豪邸で、きれいに整備された広い庭のある屋敷だった。田舎にあるためか、垢抜けていて、都会にありがちな暗さやカビ臭さは感じられない。その豪邸には部屋がいくつもあり、その部屋のうちの一つを輝や町子、そして町子の友人である友子や朝美も使っていた。
セインとクチャナが一緒に帰るとあらかじめ告げていたので、お菓子作りの得意な友子がクッキーを焼いておいてくれた。朝美は友子に教わって、お茶を淹れて待っていた。
町子と輝、セインとクチャナが屋敷のロビーに入ってきて席に着いた。フォーラは奥の部屋で誰かと電話越しに話していた。町子の後ろにはいつもテンがいたが、朝美や友子には見ることができなかったので、静かにしていた。朝美が照れながら皆の前にお茶を出していく。
「日本のお茶ですけど」
英国というと紅茶、そうイメージしていた朝美はそう言って煎茶を出した。しかし、セインは首を横に振って出された煎茶を口に含んだ。そして、朝美に笑顔を返した。
「この英国も、もともとは中国から輸入して緑茶を飲んでいました。紅茶を飲み始めたのは近年になってからですよ。ですから、日本の煎茶は新鮮です」
セインは、かなり長い間英国に住み、最近になって世界をめぐりやすくなってから、しょっちゅうそこら中を駆け巡っていた。そんなセインが言うことなのだから間違いはないのだろう。
「それで、セインさん」
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