第3話 粉挽き小屋

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 すると、レジの向こう、店の奥のほうから、怒声が聞こえてきた。男性の声だ。 「こんなパン食えるか! わしの粉をこんな風にしやがって、もう許さん!」  声は、喋り方から、高齢の男性のように思えた。町子が、興味を持ってレジの奥を見た。すると、そこには、ただ怒鳴られて委縮しているだけの小柄な男性と、顔を真っ赤にして怒っている老人が見えた。  そのまま同じようなことを何度も言って帰っていった老人と、そこに取り残された小柄な男性を見て、町子がポツリとこういった。 「なによ、あのおじいさん。いいパンじゃない」  すると、事を静観していたセインとクチャナが町子に笑いかけた。 「確かにここのパンは美味しい。文句はないよ。だからこそ、この問題を君たちに解決してほしいんだ。この問題が解決しないと、クリスフォード博士の研究室にはたどり着けないんだよ」
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