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マルコには、訳が分からなかった。ルフィナの父がどうしてあのように怒っているのか、全く身に覚えがなかったからだ。
マルコの話を聞いて、町子が少し考えこんだ。
「そのアントニオって人、何かありそうね。彼が来てからなんでしょ、何もかもが変わったの」
マルコが頷くと、町子は何かひらめいたように笑った。そして、彼の左手を取ってテーブルの中央に置くと、手のひらを上に向けて、その上に自分の左手の人差し指を置いた。
「私は見るもの」
そう言って、周りの人間を見た。
「この手のひらに、この大地が見たものを映し出すことができる」
輝は、その言葉に唾をのんだ。町子の能力、その片鱗を垣間見るチャンスだった。
「さあ、イタリアの大地よ、真実を見せて。そのかけらの一つでも、私たちに教えておきたいことがあればすべて」
すると、町子の言葉が終わるか終わらないか、そんなタイミングで、マルコの手から何かが聞こえてきた。それはまるで、マルコの手のひらがスピーカーになったような感じだった。
まず、この中の誰もが知らない声だった。男性の声だ。
「父さん、行ってくるよ。そして必ずこの土地を手に入れてみせる。父さんの夢のために」
すると、もう一人、知らない男性の声が聞こえてきた。
「頼むよ、お前だけが頼りだからね、アントニオ」
ああ、あの声はアントニオだったのか。マルコはそう心の中で思った。しかし、アントニオとその父親はいったい何の話をしているのだろうか。
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