第3話 粉挽き小屋

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 マルコの心配をよそに、会話は続いていく。 「この土地を手に入れた暁には、彼女との結婚も認めてもらうよ、父さん。この土地の人間にしては、彼女は田舎臭くない。聡明で美しい女性だ。それだけは認めてもらう」 「お前がそこまで褒めるのなら、相当な美人なのだろうね。いいだろう。この土地を手に入れて私の夢が叶ったら、お前とその女の結婚を認めてやろう」 「でも、父さん、それには一つ障害があるんだ」 「障害?」 「うん。あのパン屋のマルコって奴。あいつが邪魔なんだ。あいつもどうやら彼女のことが好きらしい。彼女をあいつには渡したくないんだ」 「アントニオ、お前がそのマルコという奴に敵わないというのか? お前のようにハンサムで、頭のいい坊やがそんな田舎者に負けるわけがない。自信を持ちなさい」 「自信がないわけじゃないよ、父さん。この僕がそんな田舎者に負けるわけはない。ただ、うっとうしいだけなんだよ。あいつが彼女に付きまとうのがね」 「そうか。なら、ロベルタに頼むといい」 「ロベルタ? あいつが何の役に立つんだい?」  ロベルタ、と聞いてマルコはびくりとした。ロベルタはアントニオの妹だ。毎日何度もこのパン屋に来てはマルコに色目を使っていた女だ。 「まさか」
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