第3話 粉挽き小屋

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「日本人は舌が良いと聞いたが、本当にこんなパンがうまいと思ったのか?」  老人は、次に町子と輝にそう尋ねた。町子は、老人よりはるか長い間生きているクチャナ達が折れたのを見て、この雰囲気を壊してはいけない、そう考えた。輝に目配せをすると、輝は頷いて返してくれた。 「まだ子供ですから」  町子はそう返した。 「やれやれ、このパンの味の違いが分かるのは、わしとマルコだけになってしまったな」  バルトロは、そう言うとマルコのほうを向き直った。 「マルコ、お前が先程言ったことに嘘偽りはないだろう。陰で聞いていて、出てこなかったのは謝ろう。しかし、このこととルフィナのことは別じゃ」 「お父様!」  ルフィナが抗議をしようと前に出てくるのを、セインが止めた。 「まあ、聞いていなさい」  ほかならぬ二千年の長寿を誇る風の刻印の持ち主の意見に、ルフィナは足を止めた。
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