第3話 粉挽き小屋

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「うむ。人の話は最後まで聞けと言っておる。他ならぬわしの粉でなければならないといったマルコがこの店を盛り立てていくには、このまずいパンでは駄目だ。もし、粉をわしのものに戻しても、あのロベルタとかいう女がやってきて評判を落とすかもしれん。女を追い返すには女だ。ルフィナ」  そう言って、バルトロはルフィナの肩をたたいた。 「このパン屋のことは、お前に任せよう。このノロマなマルコのことだ。自分一人で盛り返すのは無理だ。女のお前が手伝って、この店にわしのもの以外の粉が入ってきたら、マルコのやつの尻をひっぱたいてやれ。マルコ、お前はせいぜいわしの粉でいつも精いっぱいのパンを焼くことじゃな。でないと娘は返してもらう」  バルトロはそこまで言うと、疲れたように店内の椅子の上に座った。 「お父様!」  椅子に座ったままの父に、ルフィナは泣きながら抱きついた。その様子を見て、マルコも大泣きしていた。その二人を優しく見守りながら、バルトロは娘の背をトントン、と、叩いた。そして、それを見守っている輝たちを見て、ひとつ、頷いた。
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