第4話 研究室

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第4話 研究室

四、研究室  クリスフォード博士の研究室のある場所を知っているのは、バルトロだけだった。セインやクチャナもクリスフォード博士には直接会ったことはなかったからだ。  バルトロは、店のことをマルコとルフィナに任せ、自分の家にある小さな車に四人を乗せた。運転するバルトロを入れて五人、ぎりぎり乗れるか乗れないかの車だったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。見慣れない道や、林の中を何度もくぐってついた場所は、大きな木々に囲まれたひとつの屋敷だった。木造の古い屋敷の手前には門があり、そこには確かにクリスフォード博士の名が刻まれていた。  中に入ろうとドアノブに手をかけると、鍵がかかっていた。 「まずいな、鍵を忘れてきてしまったわい。取りに帰るか」  時間がないわけではない。皆がいったんここをあきらめて帰ろうとすると、クチャナがあっと声を上げた。皆がクチャナのほうを見たので、彼女は違うと言って、皆の進もうとしている方向を指さした。  見ると、そこには人が二人いた。研究室がある屋敷の門のほうだ。走って近づいていくと、今度はセインがあっと言って立ち止まり、そこにいた人物の名を呼んだ。 「カリーヌ、シリウス!」  二人のうち、カリーヌと呼ばれた女性は、プラチナブロンドをショートカットにした女性で、かなりおしゃれだった。薄い藤色のスーツを着ていたが、安物ではないのだろう。輝は、この女性から只者ではないオーラを感じた。そして、どこかで出会ったことのある感じも受け取った。
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