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【起】
初夏の夜、私は堅苦しいリクルートスーツを手早く脱いでスエットにTシャツを着込み、テーブルの上にはつまみにお菓子を用意、そして当然のようにビールを数本用意した。
「よーし、今日はひたすらこれを見るんだ!」
明日は休日、予定なし!
私は借りてきた『呪いの○○』シリーズをしこたま借りてきた。そしてそれを、いそいそとデッキ代わりのゲーム機にセッティング、再生を押した。
淡々と流れる音声、監視カメラに写る不可思議なもの。それらにゾゾゾッとするのが私の夏の楽しみ方。
季節になれば某怪談師のオールナイトイベントにも参加するし、時にはお寺で行われる落語家の怪談も聞きに行く。
こう……想像を巡らせて寒くなる感じが快感なんだ。
例えばだ、こうして見ているテレビの一瞬の暗転、瞬間映る部屋の風景と私の顔。そこに違う誰かが映り込んでいたりしたら?
何気なく見た隙間から誰かの目が覗いて消えたら?
怖い。怖すぎる!
そうして映像と映像の間にある暗転。映し出された私の部屋と私の顔……
「え?」
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